札幌高等裁判所 昭和28年(う)796号 判決
本件記録及び原裁判所で取調べた証拠により認められるとおり被告人は昭和二十八年四月三十日岩見沢簡易裁判所において覚せい剤取締法違反の罪により罰金五千円に処せられた前科があるにも拘らずその後間もなく麻薬を施用しはじめ、本件犯行当時既に麻薬の中毒者となつていたもので、判示麻薬も自己施用のため所持していたものであること、しかのみならず被告人はこの間他から麻薬を入手してこれを夜の女等に分譲しておるものであつて、この種犯罪の社会に及ぼす害悪その他諸般の事情を彼是考えると、原判決が被告人を懲役一年六月に処した上、三年間右刑の執行を猶予したのは、その量刑軽きに失するといわざるを得ない。弁護人は被告人が右のごとく麻薬を譲渡したことは本件公訴事実の対象となつていないのであるから、かかる事情は量刑にあたつて考慮さるべきでないと主張するけれども、およそ刑の量定たるや、当該犯罪の具体的事実のみによつてきめられるべきではなく、その他犯人の性格、行状、年令、境遇、犯罪後の情況等のすべてを考慮してきめられるべきものである。そうして被告人に対する刑の量定をなすにあたり叙上の点を考慮に容れるのは別罪の刑を併合加重するのではなく、犯人の行状の一として考えるのであるから、違法の処置ではなく、弁護人の主張には賛同できない。検察官の控訴は理由があるものといわねばならぬ。